競馬の外れ馬券は経費になる?一時所得と雑所得の計算を比較しよう

競馬・税金

競馬の払戻金には一時所得の課税対象となる可能性があります。多くの競馬ファンの中では兼ねてから二重課税であると指摘されながら抜本的な改革もないままとなっています。しかし、昨今では競馬の外れ馬券が経費になるという最高裁判決がなされ、競馬ファン以外の人にも注目されるようになりました。ここでは競馬の税金が経費となるかどうかについて解説していきます。

競馬をやる上で避けられない2つの税金「一時所得」と「雑所得」

競馬をやる上で覚えていた方がいいのは2つの税金です。ほとんどの競馬ファンに関係するのは一時所得であり、雑所得は事業的な意味合いを込めるのでなかなか馬券では申告することはないでしょう。次にこの2つの違いを見ていきます。

一時所得は経費がほとんど認められない

一般的に生活する上で一時所得と雑所得という言葉は確定申告のときにしかほとんど使いません。基本的に競馬の払戻金には年間の総合計額が一時所得の課税対象となります。例外として総合計が特別控除額の50万円以下の場合や趣味として競馬を楽しむのではなく、投資的に競馬の馬券を購入している人を除きます。

前者は特別控除額を下回るとそもそも税金がかかりません。これは年末調整でよくみかける配偶者控除(特別控除)と同じで、収入が低い人に対しる税制上の優遇処置となります。

この一時所得は経費があまり優遇されていません。というのも、一時所得は一時的な臨時的収入という意味合いになるので、その収入にかかった経費しか認められていないのです。

どういうことかというと、競馬で例えれば馬券を購入した金額は投資となるものの、一時所得で経費となるのは的中した馬券のみになります。厳密にいえば、馬券を窓口で購入すれば1枚の投票券(勝馬投票券)となります。

この1枚の馬券には何通りもの予想が入っていることがあり、主に流し・BOX、フォーメーションなど、何点も購入しているものです。経費として認められる勝馬投票券は1枚ということではなく、実際に的中した式別の点数のみとなります。

仮に馬連BOX3点買いで①-③-⑧と3点通りの馬券を各1,000円ずつ購入して、的中が①-⑧になったとします。ここで経費となるのは的中した①-⑧の1点のみで、①-③と③-⑧は外れ馬券として経費になりません。

1枚の馬券で3,000円を購入していますが、経費になるのは的中した1,000円のみとなります。

年間で払戻金額が購入金額を上回れば一時所得は損をする

この一時所得ですが、公営ギャンブル全体での年間収益が関係してきますので、競馬以外にオートレースや競輪で大きな配当を得た場合(オッズパークのロトなど)も年間で合算しなくてはいけません。Win5を的中させた場合も払戻金が高額になりますから注意が必要です。

もし投票金額100円でWin5が的中し、1,000万円という大きな配当を年始に当てた場合、年末までに余裕があるので馬券を購入し続けることもありえます。そこから勝ち続けるのも難しいので人によっては同じくらい負けてしまう可能性もあるでしょう。

途中で何回か的中したとしても、その分上乗せして馬券を購入し続けているでしょうから、年始に増えた1,000万円の資金が年末にほとんど負けてしまい、残り100万円くらいにまで減ったとします。

他に的中したレースが50万円、その投票金額が30,000円としましょう。

一時所得の計算式は以下になります。

(年間払戻金額1,050万円ー年間経費30,100円ー特別控除50万円)×1/2この場合には約498万円が課税対象額となります。498万円の税率は20%で控除額が427,500円となりますから、納める所得税は経費が約56万円となります。わずか100円からスタートしたのに、手元に残ったのが100万円としたら、半分以上を税金で徴収されることになります。税金を50万円近く納めなくてはならないとは、さすがに納得しろというのは無理があります。

ではこれが雑所得だったらどうでしょうか。

雑所得とは

雑所得は馬券購入が継続性のある営利を目的とした場合に認められます。一般的には公的年金が該当し、サラリーマンの副業も雑所得になります。雑所得は20万円以下だと確定申告をする必要がありません。

単純な投資で考えると、将来の価値が上がると予測(的中すると予想)して馬券に投資を行い、配当があれば利益になります。配当が投資を下回れば赤字になるので、一種の投資と同じ考え方ができるのです。

さらに利益が出ればここはチャンスとみて投資額を上乗せすることも可能です。馬券でいうところの通常1レースを1,000円で購入していたのに、資金に余裕が出始めたので倍の2,000円にします。こうなればオッズが同じでも配当も倍になりますし、まさに投資をしているといえるでしょう。

雑所得はこのような競馬でも投資と同じように継続性のある利益と税務署や裁判所に納得させないといけません。税務署は納得しないのが基本ですが、最高裁では一時所得と主張した検察を退けて雑所得であると認めた例があります。

雑所得の計算式を先に例にあててみてみましょう。

雑所得の計算式

年間払戻金額1,050万円で手元に残ったのが100万円なので、外れ馬券は的中分の投票券30,100円を引いた947万円と仮定します。

年間払戻金額1,050万円ー的中馬券の投票金額30,100円ー外れ馬券の総額947万円=999,900円となり、実際に手元に残った100万円が課税対象額となります。税率は5%になるので、納付する所得税は約5万円と一時所得よりも1/10以上も減額することができました。

馬券的には結果が同じなのに納める税金がこれだけ違うと雑所得で申告したほうがお得というのは間違いありません。

ただし、この雑所得を競馬に活用するのはかなり困難といえます。まず国税庁では公営ギャンブルでの利益(払戻金)を一律基本的には一時所得であることを明言しています。国からすると法律で取れるはずの税金を安くしようなんて思ってもいません。

外れ馬券が経費として認められたのも検察庁や国税庁ではなく、当事者たちが最高裁まで争ったからといえますが、逆にいえば検察や国税庁も何一つ納得していないことがうかがえます。

外れ馬券が経費として認定された裁判

外れ馬券が経費として認められた例外として有名なのが大阪の男性が競馬で自動ソフトを使い、35億円もの払戻金を上げて外れ馬券を除く1億5千万円もの利益を計上したことです。

大阪国税局からは6億円以上の追徴課税を受けており、これは実質手元に残った利益分の4倍にあたる金額でした。さすがに支払えないものですから国税庁を相手取り「馬券購入費用が経費にならないのはおかしい」として裁判をおこしており、最終的に原告側が勝訴しています。

この裁判では外れ馬券が経費になるかが焦点となっています。最高裁までもつれましたが、自動ソフトウェアを活用して継続性で営利目的であることが明白であったことが決め手となっています。外れ馬券が経費として認められたので、男性は雑所得で申告することができ、追徴課税もかなり減額することができました。

この男性が勝訴できたのも、自動で馬券が購入できるソフトを使ったことが挙げられますが、雑所得と一時所得では経費になる馬券の金額が大きく変わるという内容が全国ニュースでも取り上げられたのは大きいといえるでしょう。

これを受けて国税庁のHPでも雑所得での取り扱いについて触れています。ただし、雑所得にするにはかなりのレアケースであり、基本的には一時所得で確定申告するのは変わらないので安易に雑所得と勘違いして申告を疎かにすることのないように注意しましょう。

まとめ

競馬の払戻金には一時所得と雑所得がありますが、一時所得には外れ馬券が経費にできないデメリットがあり、申告する税金も高くなります。一方の雑所得では外れ馬券も経費にでき、実際に最高裁でも判決がでている反面、一般の競馬ファンが申告するにはかなりハードルが高いことが挙げられます。

どちらも自分の的中馬券から税金を取られるのはやるせない気持ちになりますが、納税は国民の義務にあたるので申告漏れがないように心掛けましょう。