競馬ファンにとって気になるのが的中馬券の払い戻しにかかる税金ではないでしょうか。馬連や3連複では大きな配当はよほどの大穴でもない限り望めないものの、3連単やWin5では夢のような馬券も不可能ではありません。だれもが目指したい高配当ですが、その結果で税金をどれだけ取られるのか知っておかないと万が一申告漏れと税務署に指摘されるかもしれません。そこで競馬にどのような税金がかかるのかここで解説していきます。
競馬にはもともと税金がかかっている
競馬は血統や名馬の勝負など、スポーツでありロマンがあるという人も多いものです。とはいえ、お金を賭けるので公営ギャンブルとして成り立ち、馬券を購入した以上は絶対に勝ちたいとだれもが思うものです。しかし、馬券の購入にはもともと税金がかかっているのはご存じでしょうか。税金とはいっても、所得税や自動車税のように、○○税となっているわけではありません。すべての馬券(勝馬投票券)には国庫納付金が控除されています。
これはJRAのHPにも記載されており、100円の馬券には75円が払戻金として充てられ、10円が国庫納付金、残り15円がJRAの運営費となるわけです。もちろん、競馬を主催しているJRAの運営費に充てられるのは理解できますが、国庫納付金はどうでしょうか。
国庫納付金とは国に収めるお金のことを指しています。まあ、10円くらいならいいかと思うでしょうが、はっきりいって現行の消費税と同じ金額が国に収められているのです。
実際に馬券を購入する際、100円の単勝馬券のみを握りしめるのはほとんど初めて競馬を楽しむ初心者の方でしょう。1レースに数千円、月に数万円ほど馬券を購入する競馬ファンの方になると、たとえ10%とはいえ、年間では数万円ほどの金額が国庫に入っていることとなります。
ここでポイントとなるのが国庫納付金は税金に該当するのかということですが、実際にJRAでは勝馬投票券からなる国庫納付金が畜産振興や社会福祉に役立っていると謳っています。個人から国に入るお金で一般財源に繰り入れられるということは税金といっても過言ではないでしょう。なにせ、財務省では国庫納付金のことを収入と呼んでいるほどです。
高額の払戻金に税金が発生
馬券を購入するたびに国庫納付金を納めていることが分かったとはいえ、実は高額の払戻金にも税金がかかります。よく著名人が3連単などの高額の馬券を的中したときに「きっちりと納税します」というインタビューが見受けられますが、これは一般人の方でも当然適用となります。
では払戻金にはどのような税金がかかるのでしょうか。それは一時所得と雑所得に分かれています。一時所得はその名の通り、一時的に収入を得た利益のことを指します。一方で事業として利益を得た場合には雑所得になります。
競馬をギャンブルとして個人が楽しむのは一時所得になり、課税対象となってしまいます。そのため、高額の払戻金を勝ち取った競馬ファンは確定申告をしなければなりません。高額の払戻金とはいうものの、人によって高額の桁が変わってくるものです。1点100円の馬券しか買わない人が大穴の3連単を的中させて払戻金が10万円を超えた場合も当人からすれば高額といえます。しかし、すべての払戻金が対象となるわけではありません。一時所得では50万円を超える収入が課税対象となっていきます。
外れ馬券よりも購入した馬券が控除対象
一時所得にかかる控除は的中馬券の購入費で収入を得るために擁した費用として利用できます。払戻金が100万円を超えた場合、馬券購入費にかかった費用が2万円とすると、100万円から2万円を引いた金額が総収入額となります。
総収入額=100万円(的中払戻金額)ー2万円(馬券購入費)
これに控除の50万円を引いて、1/2した金額が課税所得となります。
課税所得={98万円(総収入額)-50万円(特別控除)}×1/2
上記から24万円がこのケースの課税所得額となるのです。
ここまできて、馬券を常に購入している競馬ファンからすると、「ちょっと待ってほしい」となるのではないでしょうか。馬券で一喜一憂している側からすると、「的中していない外れ馬券はどうなるの?」と疑問を持つものです。現行の法律では外れ馬券は馬券購入費として認められず、的中した馬券のみに該当してしまいます。
朝一のレースに的中した分の払戻金で他のレースを購入したにもかかわらず、一時所得に認められる馬券購入費は的中した馬券のみとなれば、多くの競馬ファンにとって納得がいくはずもありません。100万円が最初に的中し、これを軍資金にして残り全レースを外した場合はたとえ収支がゼロだったとしても、最終的には100万円の払戻金に税金がかかってしまい、手取り金額ではマイナスになります。
一方の雑所得は20万円を超えると確定申告が必要となりますので、控除的には一時所得のほうがお得に感じますが、こちらは事業として経費を計上できます。的中馬券以外にも外れ馬券が存在しますので、事業として利益を挙げていたとすれば経費に乗せることが認められる可能性があります。もちろん、継続して馬券を購入している必要性が認められないといけませんので、一般の競馬ファンに適応されるのは難しいといえるでしょう。
確定申告は年間の利益
競馬ファンからすると納得がいかない税金の仕組みはまだあります。先に挙げた50万円を超える払戻金の話は1レースではありません。実は一時所得は年間に50万円を超える利益のことを指しています。こうなると、的中馬券が少なからず積み重なった人は年間で払戻金が50万円を超えることは難しくありません。万馬券を何回か的中させるか、軍資金を多く賭けた場合には払戻金も膨らみます。この場合、年間で50万円を超える競馬ファンも多いはずです。
G1レースにだけ多い金額を購入したとしても、年間20レースほどあるJRAの場合、50万円を超えることは意外に可能といえます。ただ、50万円を超えたかどうかは自分では把握しづらく、負けたレースの方が多いだけに累計の払戻金額をいちいち覚えていない人のほうが多いといえるでしょう。
また、一時所得は個人にかかる年間の所得ですので、他に懸賞の当選金や保険金の満期などがある場合には合算して確定申告しないといけません。そのため、仮に払戻金が年間50万円を超えない場合にも確定申告が必要なケースがあるので注意してください。
雑所得は個人で楽しむ人には難しい
雑所得の場合だと、外れ馬券を経費として計上できることがあります。実際に最高裁で判決されているので目にした人も多いでしょうが、要は事業として継続して利益を出しているかどうかがポイントになります。継続した事業となると、的中した払戻金を自動的に加算して新たに馬券を購入するシステムが必要になるでしょうから、1レースごとに一喜一憂して個人で馬券を楽しむファンだと雑所得として申告するのは難しいといえます。
もし継続して利益を追求できる仕組みを開発しているのなら、年間50万円の払戻金を超えることもあるでしょう。その場合は事業として認められる可能性があるので、外れ馬券が経費にできる分、一時所得よりも雑所得として確定申告するのがベターといえます。
ただし、最高裁で判決がでた例もレアケースですので、毎回外れ馬券が経費として計上できるかどうかはまだまだ未知数ともいえます。
まとめ
競馬に勝てば勝つほど払戻金が増えていきますので、年間50万円の利益(払戻金)を得た場合は一時所得となりますから、確定申告をして税金を納めないといけません。馬券を購入するたびに国庫納付金を納めているので、払戻金にまで税金を納めるのはいかがなものかという意見もでるでしょうが、国に入る税収なのでそう簡単には覆りそうもありません。
万が一にも高額の払戻金を手にした場合に備えて、正しい税金の知識をもって競馬を楽しむようにしていきましょう。また、事業として継続した利益をねん出できる場合は、外れ馬券を経費に計上できる雑所得として確定申告するようにしましょう。